ビジネスでの利用が拡大するSMS
電話番号宛てに短いテキストを配信できる「SMS(ショートメッセージサービス)」。今回は、SMS配信の特徴や用途を通して、ビジネスで活用され始めた背景や理由について解説します。SMS配信の方法や配信サービスの選び方なども併せて紹介するので、比較検討時のチェック項目として参考にしてください。
SMS配信の特徴
SMSは、従来は携帯電話のユーザー同士が連絡をとるため、いわゆる個人利用が中心でしたが、ビジネスにおいてもさまざまなメリットがあることから活用事例が急拡大しています。
アプリのダウンロードや利用登録手続きが不要
手軽なコミュニケーションツールとしてLINEやTwitterなどのSNSも人気ですが、これらは基本的にメッセージの配信側だけでなく受信側もアプリをダウンロードしなければなりません。相手がアプリを備えていない場合、配信側から受信側へダイレクトにメッセージを届けるのは難しいのが懸念点。LINEであれば、企業の公式アカウント連携をユーザーに承認してもらわなければいけません(友だちになるボタンをクリックしてもらわなければいけません)。その点、SMSなら相手の電話番号さえ分かればメッセージを配信することができます。
SMSはスマホだけでなくガラケーにも標準搭載されており、どのユーザーも専用アプリをダウンロードしたり、利用登録手続きを行う必要がありません。携帯電話を普通に使っているだけで、すでにSMSを利用する体制が整っているのです。そのため、インターネットや携帯電話の取り扱いに詳しくない方にもアプローチできます。受信側に手間をかけさせなくてもダイレクトに情報を届けられるという点は、SMS最大のメリットだといえるでしょう。
顧客情報を長期間活用しやすい
SMSで利用される電話番号は、メールアドレスやSNSのアカウントなどと比べて変更される頻度が低く、一度顧客情報として電話番号を取得すれば長期間にわたりアプローチできる可能性が高いのが特長です。従来は、通信キャリアを乗り換える際には電話番号も変更必要がありました。そのため、いつの間にか顧客の電話番号が変わっており、連絡できなくなるというケースも珍しくなかったのです。
しかし2006年にMNP制度が開始されて以降、希望すれば通信キャリアを変更しても同じ電話番号を使い続けられるようになりました。電話番号を変更する場合、知人への連絡や電話番号を登録してある各所への変更手続きなど、煩雑な手間がかかります。そのため、MNP制度を利用して同じ電話番号を使い続けるユーザーが多くなっているのです。
令和元年に総務省が公表した「電気通信市場の分析結果」によると、2006年のMNP利用数は199万番号でしたが、2017年には482万番号、累計では4,752万番号にまで増えています。
このように電話番号は、長期間にわたり変更されず使用されているケースが多い情報です。
ポップアップで受信に気付きやすい
SMSでメッセージを受信した場合、画面にポップアップが表示されるようになっています。そのため視認性が高く、ユーザーの目を引き開封を促しやすいのが特長です。また、SMSは配信するたびにコストがかかることに加え、ビジネスとしてSMS配信サービスを利用するには通信キャリアによる審査を受けなければならず、導入する企業がまだ多くありません。そのため他のコミュニケーションツールと比べて、メッセージを受信する頻度が多くなく、埋もれづらいのもメリットです。
特に、2019年に実施した20代から60代以上までの男女492人を対象としたアンケートでは、SMSの平均未読数は26件である一方でメールは約86件と約3倍の数値が報告されています(※)。受信に気づきやすく開封率が高いことから、SMSは特に確認して欲しい内容を送るのに適した連絡手法といえます。
※当社調べ(調査時期:2019年12月、調査方法:インターネットアンケート、対象者:20代から60代以上までの男女492人)
災害時でも配信が可能
地震や台風、豪雨など、近年日本を襲う自然災害は被害が激化することも珍しくありません。もし自然災害に見舞われた場合、企業はすぐにスタッフの安否や設備の被災状況、今後の対応などについて情報収集を行う必要があります。しかし、メールやアプリなど通常のインターネットを利用する場合、災害発生時は回線が混雑して通信が不安定になる可能性があるため注意しなければなりません。メールやインターネット通信は、ひとつの回線を多くのユーザーで分け合って使う「パケット交換ネットワーク」を利用しています。
そのため自然災害などイレギュラーな事態が起きた場合、安否確認や情報収集などで通信量が一気に増えて回線が混み合い、通信が遅くなったり途切れたりしやすいのです。これでは迅速な情報収集ができず、対応が後手に回ってしまうかもしれません。
これに対し、SMSが利用しているのは回線を独占する「回線交換ネットワーク」です。回線交換ネットワークは主に音声回線と信号線に分かれており、SMSはそのうち信号線でメッセージをやり取りしています。信号線はデータ量が非常に軽く、音声回線と混線することもないので通信ネットワークです。災害時の連絡ラインは複数の通信手段、回線を持っておくことが重要なので、SMSをその通信手段として採用されることが多くなっています。
SMSを配信する際のデメリット
SMSを配信する場合、まず注意したいのが「文字数」です。基本的に最大で670文字まで配信可能ですが、一部のキャリアや機種では70文字程度のテキストしか配信できません。また、配信コストも事前に確認が必要です。SMSは1通送信する度に、文字数に応じてキャリアが設定した配信料金がかかります。個人においては、携帯電話から配信する場合の送信料は基本的に1通あたり3円。法人向けSMS配信サービスになると1通あたり10〜15円程度です(大量配信する場合のボリュームディスカウントが用意されているケースもあり、この場合は1通あたり10円以下に抑えられます)。
また、SMSは回線交換ネットワークの信号線を利用しているため、「テキスト以外の情報を配信できない」というデメリットもあります。写真や動画、PDFファイルなどを配信したい場合は、まずインターネット上に保存し、その共有用URLをSMSで配信してユーザーにクリックしてもらうなどの対処が必要です。
また、個人利用においては、1日あたりの送信上限通数が定められている上に一斉配信ができません。予約配信なども行えないため、これらの機能を利用したい場合は、法人向けのSMS配信サービスの利用が必要不可欠です。
SMS配信サービスの利用用途
SMS配信サービスにはさまざまな活用方法がありますが、それが自社のニーズを満たしているとは限りません。せっかく導入するなら、効果を最大限に発揮したいですよね。SMSで利用されている場面について確認しながら、自社で活用できるかどうか考えてみましょう。
SMS認証
金融機関のwebサイトへのログインやECサイトの会員登録など、個人情報を扱うサービスを利用する際は本人確認が必要なシーンが数多くあります。従来はIDやパスワードの入力で本人確認をしていましたが、インターネット普及、IT技術の発達とともにサーバー攻撃や不正ログインの手法まで発達してしまい、従来の方法は十分なセキュリティを保てなくなりました。そこで、従来の方法に加えて利用されるようになったのが「SMS認証」です。
SMS認証は、その名の通り携帯電話番号宛てに1回限りでしか使えない認証コード(ワンタイムパスワード)を配信し、それを入力してwebサイトなどにログインする方法です。なぜSMSが本人確認に利用されるほど信用度が高いのかというと、携帯電話番号宛てに直接配信できるサービスであることが挙げられます。
電話番号は基本的に1つのSIMカードに対して1つ割り振られるものであり、同じ電話番号は存在しません。電話番号を取得するには、携帯電話の契約時点で通信キャリアの審査を受け、身分証明書などを提出して本人確認を済ませる必要があるため、同じ番号を簡単に複数発行することも不可能です。
つまり、携帯電話番号宛てに配信するSMSなら、所有者本人にワンタイムパスワードを送ることができます。その確実性とワンタイムパスワードで、予め設定されたIDやパスワードに加えセキュリティが高い本人確認の手段として、SMS認証が活用されているのです。
重要事項の連絡
SMSは、支払い督促や決済など重要事項の連絡手段としても活用できます。金銭が関わるような重要事項はユーザーの不利益につながる場合もあるため、できるだけ早く確認してもらわなければなりません。しかし、電話で連絡しようとしても、知らない番号からの電話には出ないというユーザーも多いですし、何度も電話をかけると時間と労力、コストがかかってしまいます。実際に、2015年にマイナビが行ったアンケートによると、回答者全体の76.2%の方が「知らない番号からの電話には出ない」と回答されています(※)。
この点、SMSなら携帯電話番号宛てにメッセージを配信でき、ユーザーのタイミングで確認できるため電話を何度もかける手間を省くことができます。携帯電話番号は長期間変えずに使い続けるユーザーも多いことに加え、SMSはアプリのダウンロードなど特別な手間もかからないのもメリットです。また、先述したようにSMSは開封率の高い連絡手段のため、内容の確認を怠るユーザーの減少にも繋がると考えられます。
※株式会社マイナビ調べ(調査時期:2015年7月22日~2015年7月24日、調査方法:インターネットログイン式アンケート、対象者:マイナビニュース会員)
災害時の安否確認
東日本大震災が発生した際、安否確認や情報収集のため被災地には多くの電話が殺到し、インターネット通信も集中しました。これにより、固定電話では最大で80~90%、携帯電話でも最大75~90%の音声通話の規制が実施されています(※)。加えて、携帯電話の規制は数日間にわたって続き、なかなか電話で連絡をとることができませんでした。
一方メールなどの通信は最大でも30%程度の規制で済みましたが、サーバーにやはりアクセスが集中したため、送信や受信に通常よりも長く時間がかかっています。このような事例から、災害など緊急時の連絡手段は電話よりもインターネット通信が効果的であることがわかります。
それら通信ネットワークの中で、SMSは、どのような特徴があるかといいますと、回線交換ネットワークの中でも特に通信に負担がかからない信号線を利用しているということです。メールのように回線を共有するパケット交換ネットワークではなく独占回線を使っているため、比較的つながりやすいとされている通信ネットワークです。通信環境が厳しい状況下でも比較的安定してメッセージを配信できるので、実際に災害発生時の緊急連絡手段として活用している企業も少なくありません。
※総務省|2011年12月28日報道資料「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方について」より
販促やマーケティング
LINEなどのSNSと違い、アカウントの登録やアプリのダウンロードなどをしなくても利用できるSMSは、販促やマーケティング目的でも活用されており、活用の一例としてキャンペーンの告知やクーポンの配布が挙げられます。キャンペーンやクーポンは顧客にその存在を知ってもらい、利用してもらわなければ意味がありません。そのためには、いかに顧客の目に留まるアプローチをするかが重要です。SMSの高い開封率を活かすことで、キャンペーンやクーポンを認知してもらうためにも利用できます。
また、予約のリマインドとしても効果的です。直前に予約日時やキャンセル料金などについてSMSを配信することでノーショー(無断キャンセル)を防ぎ、損失を回避できる可能性が高まります。
他にも、来店後のフォローや休眠顧客の掘り起こし、自社サイトへの誘導などさまざまな販促やマーケティングに活用が可能です。
※SMSも特定電子メール法の対象となる
なお、販促のためにSMSを利用する場合は「特定電子メール法」の対象になります。この特定電子メール法とは、同意のない不特定多数の相手に対する迷惑メールの配信を規制する法律であり、SMSも販促目的で配信する場合は当法律の対象です。
具体的には、メッセージを配信する前に相手の承諾を得る「オプトイン」を徹底と、相手から配信停止の申し出があった際にすぐに手続きを行う「オプトアウト」のシステム整備や、メッセージ内に配信元の企業名などを明記することが挙げられます。これに違反すると、3,000万円以下の罰金など厳しい処分が下されるので十分に注意しましょう。
ただし、特定電子メール法の対象となるのはあくまでも営利目的の販促の場合です。販促ではない「支払い督促」などは特定メール法の規制に該当しないため、オプトインなどの義務は必要ありません。ただし、個人情報保護法では、個人情報の利用目的や利用範囲について、顧客の同意を必要としているため慎重に判断しましょう。
SMS配信サービスの選び方
ビジネスでSMSを導入する場合は、一斉配信や予約配信など便利な機能を利用できるSMS配信サービスを契約するのが一般的です。サービスを選ぶ際に注目したい4つのポイントについて、それぞれ詳しく確認していきましょう。
配信方式
SMSの配信方式は「キャリア直接接続」と「国際網接続」に分けられ、どちらを採用するかはサービスにより異なります。キャリア直接接続は国内の通信キャリアと直接接続する方式で、キャリアが担保した回線を利用するため高い到達率が期待できます。
一方で国際網接続は、海外の配信サービスを経由してメッセージを配信する方式です。コストが割安ですが、受信時に国内の通信キャリアによってフィルタリングがかかるケースもあり、到達率が低くなる懸念もあります。
文字数
携帯電話からSMSを配信する場合は最大670文字ですが、法人向けSMS配信サービスを利用する場合はこの限りではありません。70文字しか配信できないサービスであったり、670文字配信できるのは一部キャリアに限定されている場合もあります。楽天モバイルを含む全てのキャリアへ670文字送れるサービスは限られているため、比較検討時には特に注目しましょう。
セキュリティ
顧客の電話番号を管理する以上、セキュリティ性の高い配信サービスを選ぶことが欠かせません。例えば外部からの影響を受けにくいクローズドネットワークを利用している、侵入検知システムの導入やデータの暗号化を徹底しているなど、強固なセキュリティ対策が行われているか確認しましょう。また、トラブルが起きた際にすぐにサポートを受けられる体制が整っていることも重要なポイントです。
APIの仕様
SMS認証や予約確認など、自社のシステムからメッセージを自動的に配信したい場合はAPIでの連携が必要です。配信サービスがどのようなAPIを提供しているのか詳しく確認する必要があります。配信サービスが公開しているSMSの活用事例などをチェックすると、自社システムとの連携ができそうか、精度が期待できるかなど、ある程度把握できるでしょう。
また、SMS認証に特化した専用APIなどが用意されているサービスもあるため、自社に合いそうなものを選ぶことが大切です。
まとめ
電話番号でメッセージが届くSMSは、そのシンプルな機能からは想像できないようなさまざまな活用方法があります。その効果を最大限に発揮するためには、自社に合った機能や性能を持つSMS配信サービス、SMS配信事業者の利用が欠かせません。SMS配信サービスは数多く存在するので、サービス内容やコストなどを総合的に判断し、自社に合うものを見極めてうまく活用していきましょう。
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